読書

読書した本が溜まってきたので、短いレビューをば。

保阪正康『戦後政治家暴言録』中公新書ラクレ
→ネタ本かと思いきや、暴言を切り口に時代の変遷を見る面白い書物だった。
 小泉首相東条英機と語り口がカブってきているというのは、なかなか示唆に富む?


諏訪哲二『オレ様化する子ども達』中公新書ラクレ
→現場からの教育への警告。以前書いた広田氏の『日本人のしつけは衰退したか』と、
 地域コミュニティの衰退による現在への影響といった、認識は一致している。
しかし広田氏は親は子どもの「総合プロデューサー」に現在なっているとの認識であり、
諏訪氏は子どもが「オレ様」になっているとの認識。
教育社会学者と現場の教師との、まなざし(研究視点)の違いかなぁと思った。


鄭大均『韓国のナショナリズム岩波現代文庫
 韓国にはナショナリズムの歯止めとなる勢力が存在しないらしい。
日本には在日朝鮮人が一定数おり、政治圧力になるだけの勢力。在韓邦人はそうでもない。
今月の中央公論にも、反ナショナリズム的勢力を規制している?とのレポートがあったなぁ。
 というより、本書で一番考えさせられてしまったのは、後書きなんだな。

 私の日韓関係論や韓国論は、韓国にクリティカルな性格を持つものである。そういう文章を書くと、今日の日本では、保守派の媒体で受け入れられても、進歩派の媒体では受け入れられにくい。例えば東アジアのナショナリズムを語るとき、私は日本のナショナリズムよりは北朝鮮や韓国のナショナリズムに注意を喚起する。(中略)
 しかしこの日本では、ナショナリズムに敏感といわれる人ほど、北のナショナリズムには寛大であり、また韓国では、北朝鮮との差異性を強調する国民ナショナリズムが封じ込まれ、逆に北との運命共同性を謳う民族ナショナリズムが政権によってサポートされるという状況がある。これはおかしいではないか、というのが私の意見ではあるが、そんな議論を受け入れてくれるのは通常保守派の媒体に限られてしまうのである。(中略)
 日本の進歩派と保守派との間にある知的棲み分けは、日本人をさらにひ弱にするだけで、それぞれの媒体はもっと異論は反論を取り込んでいいのである。

今回、この書は岩波現代文庫から出た。著者はすごいこのことを喜んでいる。
むしろ作者が疑問をもっとぶつけたいのは、日本の「知の島宇宙」的構造なのかも知れない。


ジョナサン・ウルフ『政治哲学入門』晃洋書房
id:DerMassが、岩波の『一冊で分かるシリーズ「政治哲学」』を入手してたんで、
その本の文献案内に載ってたおすすめ概説書である、本書を読んでみた。
決して先に手に入れられた腹いせじゃありません。
概説書のクセに、ダイナミックに読ませてくれるのには感動。
「自然状態」→「国家を正当化する」→「誰が支配すべきか」→「自由の位置」→「財産の配分」
と進む流れはスムーズかつ、面白い。
概説書やから、前に学んだことが出てきたりするけど、改めて頭を動かすにはいいなぁ。


姜誠『5グラムの攻防戦―パチンコ30兆円産業の光と影』集英社
すごい面白かった。「ダービー物語」事件は子供心に覚えてたけど、裏にあんなことが!?
まだまだ学ぶよ!この業界!
いかんせん古いから、新たにレポート書いてくれ!


黒武洋『そして粛正の扉を』新潮文庫
文庫化されてたので買ってみた。第一回ホラーサスペンス大賞受賞作。
すごいパワーはある小説です。ある意味爽快。



【追記】