MEMO

桂木隆夫、1998『新版・自由社会の法哲学』弘文堂

不完全な人間が作る暫定的で人間臭い秩序という観点から考えるならば、「人間は自分の利益のみを追求する存在であり、勝手なことばかり言わせておくと切りがないから、公的権威に黙って従う他はない」と考えるのも、「人間は理性的な存在だから、自分の権利を徹底して主張しても予定調和的に秩序を達成することができる」と考えるのも、共に誤りである。人間は完全に自己中心的で利己的な存在でもないし、完全に善意の理性的存在でも無いのである。むしろ、部分的に利己的で部分的に理性的でもある人間が何とか築き上げた競争と相互信頼の関係を法によって暫定的に保護することが、人間的秩序の中心的問題なのである。(P97)