『成功する政府 失敗する政府』MEMO

A.グレーザー,L.S.ローゼンバーグ『成功する政府 失敗する政府』2004年 岩波書店
政府がある政策を成功させるには「信頼性」「合理的期待」「クラウディング・イン/アウト」「複数均衡」の4つをうまく機能させることが必要であるという。たとえば禁煙政策。

喫煙政策が排出政策(車の排ガス規制)よりも信頼性の高いものになっているのは、喫煙を減少させる当初の成功によって、反喫煙政策への政治的な支持が増加して、政府が後戻りするのが困難になっているからである。喫煙をやめた人や、喫煙が抑制されるだろうと考えて投資をしてきた企業は、もし政策が変更されれば怒るだろう。そのことが政府の反喫煙政策を信頼性のあるものにしている。(26-7)

喫煙者をめぐる複数均衡のもとで、喫煙政策は禁煙方向への均衡へと張り付いた(よい?)例とも言える。しかし、信頼性と共に、ある均衡へと張り付くという状況は、引用した通り「後戻り出来ない」という状況になる。
そういえば安井至氏のblogでこれに関連する話題、電気自動車の開発のコトが書いてあった。

共同歩調を却って強めただけ。当面、燃料電池車が重要なテーマではなくなったことを内外にアナウンスする効果がある。燃料電池については、例えば、家庭用には比較的早期に普及するとかいった幻想が未だにあって、実際のところ、企業内でも切りたくても切れない状況になっている。これを共同研究を切ることで、両メーカーが共同して明確な意思を表明したかったにすぎない。朝日の記者も、早く幻想から脱却する必要がある。今の形式の燃料電池車の普及は、何年先でも絶対に無い。
今月の環境「トヨタ・GM、燃料電池共同研究白紙」
http://mntrav.cocolog-nifty.com/kankyo/2006/02/post_c1b4.html

電気自動車への(合理的?)期待や信頼がそこにある以上、ある政策を撤回することは信頼を失うことになる。なまじっか排ガスの少ない車には税制優遇しているから、クラウディング・インを発生させる(期待させる)状況は整っている。手送りにならないうちに、早めに打ち消したってところなんだろうか?